みなし弁済とは
任意整理などの手続きを行なう場合は、金融業者から過去の取引の明細を取り寄せ、「正しい利息」を計算して借金の減額を行ないます。往々にして「利息を支払いすぎている」ケースが多いため、多くの場合はこれらの手続きを行なう事で、借金を減らす事が可能なのですが、ごく稀に「金融業者の求める借金の全額」を支払わなければならない場合があります。
その根拠になるのが「みなし弁済」といわれる制度です。みなし弁済とは、「一定の要件をクリアした書面の提出により、金融業者の定めた債権の金額を認める」というもので、認定された場合に限っては、「業者の主張する借金の残高」を支払わなくてはなりません。
ただし、みなし弁済は法律によって禁じられている利息を認めるという極めて例外的な制度ですから、その要件をクリアするためには、業者側がかなり厳しいハードルをクリアしていなければなりません。主に挙げられるのは次の5つの要件です。
「業者が貸金業者としての登録を受けていること」です。貸金業者の登録を受けていない場合は、利息制限法を超える金利が一切認められません。
「貸金業者が貸付の際に、貸金業法17条に定める各記載事項を1枚の用紙にすべて記載した契約書を交付していること」です。記載事項とは、貸金業者の商号、名称、または氏名及び住所(貸金業者の登録番号の記載漏れがある場合は無効)、契約年月日、貸付けの金額、貸付けの利率、返済の方式、返済期間及び返済回数などを指します。
「貸金業者が弁済金を受領する際に、貸金業法18条に定める受取証書を直ちに交付していること」です。ほぼ同上の内容を記載した「受取証書」を交付していなくてはなりません。
利息制限法を超える利息を、「債務者が利息と認識した上で」支払ったことです。利息の超過を知らずに支払った場合は無効となります。
利息制限法を超える利息を、「債務者が利息として任意に」支払ったことです。任意の支払い以外は同じく無効となります。
みなし弁済の要件
みなし弁済が認定されるためには、貸し手側が厳しい条件をいくつも満たしている必要があります。ですから通常は、みなし弁済が認定されて「利息制限法を超える金利」を支払う必要は、ほとんどありません。
みなし弁済の主たる要件は次の5つです。
「貸金業者が業として行う金銭消費貸借契約であること」。貸金業者とは、内閣総理大臣または都道府県知事の登録を受けた業者でなくてはなりません。手続き上の不備があったり、そもそも貸金業者としての認定を受けていない金融機関においては、利息制限法を超過した利息の支払いは必要ありません。違法なサラ金業者、親戚や友人からの借金なども該当します。
「債務者が利息として支払ったこと」。借り手側が「利息として認識して支払った」場合にのみ、みなし弁済が適用されます。つまり、自らの支払った金額が、元本や利息、損害金等、何にいくら充当されたか不明の場合については、この要件を満たしていない事になります。
「債務者が任意に支払ったこと」。借り手が自らの意志で支払った事が前提となります。したがって、詐欺や脅迫、錯誤による支払いや、強制執行や不法行為等による支払いは対象外となります。
「契約時、貸金業規制法第17条に定める書面を遅滞なく交付していること」、そして、「弁済時、貸金業規制法第18条に定める書面を直ちに交付していること」の2つの要件も満たしている必要があります。書面に記載する事項としては、貸金業者の商号、名称又は氏名及び住所
、契約年月日、貸付金額、利率、返済方法、返済期間、返済回数、損害金、受領金額及びそのうち元本、利息、損害金への充当額、受領年月日などが挙げられます。一項目でも欠けていれば、みなし弁済が認定されない可能性があります。
みなし弁済と過払い金請求
「利息制限法」という法律で定められている以上の利息は通称「グレーゾーン金利」といわれ、所定の手続きを行なえば取り戻す事が可能です。その「払い過ぎた利息を取り戻す」ための手続きを「過払い請求」といいます。多くの金融業者は利率としてグレーゾーン金利を採用しているため、原則として過払い請求が認められる場合がほとんどなのですが、稀に利息制限法を上回る金利が認められ、貸して側の主張する借金の全額を返済しなければならないケースも存在します。その根拠となるのが「みなし弁済」という制度です。
みなし弁済はもともと、消費者金融会社やキャッシング・クレジットなどの貸金業者に向けて作られた制度です。「みなし弁済規定」という条項が「貸金業規制法」に記載されており、このなかの第43条「任意に支払った場合のみなし弁済」に、「一定の要件をクリアした書面の提出により、グレーゾーン金利による利息を認める」という旨の記述があります。
ただし「一定の要件」を満たすためにはいくつもの基準を満たしていなければならず、通常、みなし弁済が認められる事は「ほぼ無い」といっていいでしょう。
みなし弁済は違法な利息を合法として回収できるという「極めて例外的な」規約です。平成18年1月13日にも、最高裁判所でみなし弁済を否定する内容の判決が下されています。ですから原則として、みなし弁済を利用し、グレーゾーン金利による利息の回収を行うことは不可能に近い状態にあります。消費者金融などでも、みなし弁済をあてに過払い請求を退けるケースは稀です。必要以上に警戒する必要のない制度ですから、違法な金利については堂々と過払い請求を主張していきましょう。